こんなときには鍼灸治療
こんなときには鍼灸治療
みなさんにまずお話しておきたいのは鍼灸とは奇跡の医学ではなく、したがってどんな病気でも治せる代物ではないということです。
また、 医療全体からみれば現代医学の有効性や信頼度には及ぶべくもありません。 にもかかわらず、鍼灸治療が今現在も医療の現場に生き残っているのはなぜでしょうか?
その答えを一言でいうと
現代医学の欠点を補うことができるからです。全く違った考え方や治療法にもかかわらずです。 つまり高度に発達した現代医学も完璧ではなく、その中で鍼灸の果たす役割は決して小さくないといえます。
鍼灸の使いどころ、適用疾患は腰痛や肩こり、膝の痛みばかりではありません。
現代医学で忘れ去られた養生する力、
つまり免疫力を高める力や、体質改善する力、
そして身体のなかで何が起こっているのかを分析して治療する力に対して、
とても効果をあらわします。
以下に鍼灸治療が有効な症状をいくつか提案して、 鍼灸治療をみなさんの生活のもっと身近なものにしていきたいと考えています。
大病後、身体のメンテナンスをしたい
慢性的な病気を長患いしたり、大手術の後などには身体に必要なエネルギーが足りなくなっています。健康な状態であれば食事や運動などを十分こなすことで失われたエネルギーを補填できます。
しかし食べ物を消化して血肉にするにも運動するにもそのもとになる身体のエネルギーが少なければ話になりません。
鍼や灸による治療、それは「経絡(けいらく)」という古来中国から伝わる神経でもない 血管でもないリンパでもないルートを介してツボと臓腑が共鳴しあう、そのことで身体の内部が調節されて強化されるいわば根源の治療法です。
大病後の方に対して具体的には、鍼灸治療を胃腸の働きを高めるツボ、ホルモン・免疫系に働くツボに施します。また自宅で簡単にできるお灸、あるいは指圧療法なども指導いたします。 これらの治療を一定期間継続すると身体にエネルギーがそなわり免疫力も高まるため、次第に病気になりづらい身体になっていきます。
大病後に社会復帰される方におすすめできる治療法です。
急性の痛みに
秋の終わりかけの急に冷え込んだ朝に歯磨きしながらくしゃみをひとつ、そのまま腰から全身にわたる痛みに硬直してしまう。そんな経験をおもちの方もいらっしゃることと思います。
このような強い痛みを和らげてくれるのが鍼灸治療です。 なにも腰の痛みに限ったことではありません。首が回らない、腕が上がらない、膝が痛くて階段を下りることができないなど様々な痛みを緩和します。
鍼灸治療が痛みを緩和するのを得意とするメカニズムについてすべてが明かされた訳ではありません。しかし現段階で科学的に解明されているのは、鍼や灸による刺激が鎮痛物質を分泌して、また自律神経に働きかけて血液循環を調節してくれるということです。
一本の鍼、一ひねりのもぐさが身体の痛みを取り除いてくれる過程が多少理解していただけましたか?
風邪がなかなか治らない
風邪は万病のもと。
これは風邪を軽い病気と侮るな、侮るとつぎには重大な病気になりますよという戒めのことわざです。 いつまでも治らない風邪を引きずって市販の風邪薬にたより働くのは不安でもありとてもつらいものです。 しかし一口に風邪と言っても漢方的な視線で眺めると、呼吸器系の風邪、消化器系の風邪、泌尿器系の風邪などで治療法が異なってきます。
元氣堂では身体のどの部分に風邪が居座っているのかを見極めて、追い出す治療をします。 さらに追い出すことと同時にエネルギーを補充して身体に地力をつけていきます。 うまく風邪を追い出すことができたら、それ以降はぐずぐずと長引くはっきりしない風邪をひくのではなく、反応がしっかりしたメリハリの効いた風邪をひくようになります。 上手に風邪をひいたあとは台風一過の青空のごとくリフレッシュされた身体になります。なんとも身がかるくなります。
すぐにイライラしてしまう
私たちはストレスの多い現代社会に生きています。 誰しもイライラ、気が滅入る、不安感、悲しいなどこころに多少のひずみが生じています。
すると今度は身体の調子もおかしくなってきます。頭痛・肩こり・食欲不振・咽が詰まるなどなど。病院院に相談に行くと「ストレスによる脳のシステムの変調が精神症状となって現れている」と説明されます。
ここに現代医学と漢方の大きな文脈の違いが表現されています。現代医学では思考は脳それのみの仕事と考えています。
一方漢方では喜怒哀楽や理性、集中力などは五臓六腑の働きに依存していると考えます。つまり内臓が丈夫であれば精神的にも安定感があるという論理です。 鍼灸治療はこころのひずみからくるからだの不調を脳に働きかけるのではなく原因となる内臓を特定してそれに働きかけることで治癒に導きます。
もっと丈夫になりたい
人が健康的に生き生きと暮らしていくには十分なエネルギーが必要です。
呼吸や消化吸収によって酸素や栄養が取り込まれそれらが身体のあらゆる細胞に運ばれそこで酵素やホルモンの調節を受けながらエネルギーを生産します。 様々な病的状態によってそれが障害を受ければ当然エネルギーの産出が低下してしまいます。
しかし現代医学の発達した検査によっても特に異常がないのに疲れやすく覇気のない方がいらっしゃいます。
漢方ではこのエネルギーを「気」と表現して、その不足を「気虚」と言います。とくに異常が見当たらないのに体調がすぐれない方には漢方でいう「脾」と「腎」を強化する鍼灸治療が効果的です。 この治療法は子供では特に有効で容易に風邪でダウンしない丈夫な身体づくりのお手伝いができます。
夜中に何度もトイレに起きる
ある程度の年齢を重ねるとトイレが近くなるのは自然現象といえます。
しかし夜中に何度もトイレに起こされるのはたまりません。
こんなとき鍼灸では「腎」を強化するツボに施術します。 この場合の「腎」は一般にいう腎臓よりもかなり大きな概念で人間が生まれた時に両親から授かった生命エネルギーを貯えておく場所でもあり、生殖機能や発育にも深く関係する臓腑として意味づけられたものです。
鍼灸による「腎」を強化する治療を継続することで、夜中に何度もトイレに起きなくなるばかりではなく、足腰が丈夫になる・尿切れがよくなる・性機能のアップなどのあきらめていた症状の改善も十分期待できます。