冷え症・生理痛・生理不順
冷え症
冷えは多くの女性にみられます。女性のからだはもともと温かいものですから、冷えがある、ということはからだに何らかの異常があるということです。
冷えは女性のからだを考えるときに大切な症状のひとつです。からだのバランスのくずれとかかわっているからです。
バランスを調える鍼灸治療を行うと、全身的な症状が改善され、冷えもよくなります。
たとえば、太りすぎていたので食事制限したところ、今度はやせすぎてしまい、からだが冷えきって動けなくなってしまうという症例があります。
この場合は、からだの根源のエネルギーをしっかりさせなくてはいけません。
神厥、関元への多壮灸が必要です。
命にかかわる大きな病気を西洋医学的な治療により克服したあとに冷え症になってしまう場合もあります。
これは老若男女を問いません。腎兪、志室などへの灸頭鍼により、からだの深部に熱を浸透させ、エネルギーをめぐらせることで体力を補強します。
冷え、とひと口に言っても原因はさまざまです。患者さんの冷えの原因を探り、改善するのにふさわしいツボを選び、鍼や灸を用い治療を行います。
言うまでもありませんが、冷えには食生活が大きく関わります。食事指導も鍼灸治療と並行いたします。
冷えはあまりにも多くの方にみられる症状のためつい簡単に考えられがちですが、うつ病、生理痛・生理不順、不妊症などの原因となります。
じっさいに、どのように治療したらよいか、誰の指導を受けたらよいか、わかりづらいものです。
そのようなときに東洋医学的な生活法、鍼灸治療、漢方薬などは自信をもっておすすめできるものです。
生理痛・生理不順
生理痛、生理不順は女性の宿命とも言える疾患です。
女性はこころとからだが充実して、妊娠や出産が可能となる思春期から更年期にいたるまで、生理というからだのリズムをさずけられました。
生理の乱れが生理不順であり、それが痛みや周期の乱れなどの症状として現れます。
生理痛・生理不順の治療を鍼灸で行う前に、まず子宮内膜症や卵巣嚢腫など子宮や卵巣に形態的な異常がないか、また糖尿病・腎臓病・高血圧などの全身的な原因となる病気が関わっていないか、医療機関でしらべていただくことをおすすめします。
形態的な異常や全身性の病気の場合には、根本となる病気の治療が必要だからです。
長期にわたり生理痛・生理不順が続く場合には、まずは専門医の診察を受けてから来院なさってください。
鍼灸により治療効果が発揮されやすいのは、子宮や卵巣に形態的な異常がみられないが生理が不順であったり痛みがある場合です。
原因により治療法、使用するツボはさまざまです。血液の流れが悪く固まりやすい、からだの中に冷えが入りこんでしまった、体力不足でからだを温める力が弱くなっている、からだの中に不要な水がたまっている、血液が不足している、血液の中に熱がこもっている、ストレスで生理をおこす機能が調わない、などの東洋医学的な診断に沿った鍼灸治療を行います。
三陰交、関元、腎兪といったツボを中心に鍼灸治療を行います。
「体質だから」とあきらめてしまっている方、鍼灸治療は多くの生理痛・月経不順の改善例をもっています。生理のときの生活法の工夫についてもお伝えしています。
妊娠・出産のできる体づくり
症例) 30代後半 女性
結婚して5年。2年前に6週での流産を経験している。年齢的に30代の後半にさしかかってきたこともあり、半年前から婦人科で不妊に関する検査を受けることにした。そこでは夫婦ともに妊娠するにあたり器質的に大きな異常がみられなかったので、今のところタイミング療法を行っている段階。できるだけ自然なかたちでの妊娠を望んでおり、漢方薬も3か月前から服用している。生理痛はほとんどないが、ときどき不正出血することがある。パートナーの精子にも異常はみられない。
時間的に不規則な仕事をされており、身体は疲れ気味。ストレスは常に感じている。そのようにストレスでイライラするときには、甘いもの(好きなチョコレート)に頼ってしまう。年齢的に30代の後半にさしかかってきたこともあり、腎気を調節する治療に加えて、疲労回復、およびストレスで悪化した気の流れを快復することを目標に治療を行った。それとお腹に触れると、下腹部が冷えていたので、その部分をとくにお灸で温めるようにした。生理の前後に鍼灸治療を行うことにしたが、すぐにそれまではあいまいだった高温期と低温期の差がはっきりとしはじめ、不正出血も見られないようになってきた。自宅でもお灸をしていただくことにしたが、徐々に手足の冷えも改善してきた。鍼灸治療を始めてから5か月後に妊娠検査薬と基礎体温表で妊娠を確認することができた。その後も出産まで三陰交のお灸を継続していただき、無事に出産することができた。このようなケースは男女ともに年齢的にも比較的に若く、条件が整っていたからこその結果である。不妊治療はこのようにハッピーエンドのことばかりではない。
不妊治療に関して、鍼灸や漢方薬にできることは、とても狭い範囲に限定されている。たとえば排卵を誘発したり卵管を通すとか人工授精、顕微授精などはまったくもって手がとどかない。不妊専門医の為すべきところにある。ただし、鍼灸や漢方薬には、それらの西洋医学的な治療により、疲弊した心身の回復、基礎となる男女の体力づくり、女性の生理周期の乱れを改善してメリハリのある生理周期に近づけること、ストレスによる気滞の解消などさまざまな貢献ができる。不妊治療の現状をみると、西洋医学的な治療は突き進む感じで、頼りがいはあるが、それだけに心身の消耗もいちじるしい。東洋医学は地味ではあるが縁の下の力持ち的な存在でしっかり消耗された体をサポートできる。