第54号~梅雨におすすめの食品
梅雨になるとからだが重だるい、神経痛がでやすい、持病が悪化しやすい、という声をよく耳にします。じとじとして、爽やかな季節ではありません。
今回のコラムでは、梅雨を少しでも快適にすごして頂きたく、おすすめの食品についてお話しいたします。
「薬補(やくほ)は食補(しょくほ)にしかず」とは、健康のためには薬よりも食べものが大事、という意味です。『養生訓』の作者、貝原益軒は日々の食生活の大切さをこの言葉にこめました。梅雨になると、自然に同調するように、からだの水分代謝が悪くなります。それが様々なからだの不調を呼び起こす原因となります。みなさまも暮らしの中に湿気を取り除く食品をぜひ取り入れてみてください。
はと麦茶
はと麦茶はからだの余分な湿気を尿として出します。梅雨にもってこいの飲みものです。ふぅふぅと冷ましながら飲むくらい熱い温度が理想です。普段お茶を飲むときといっしょです。どんなに暑い気候でも冷たい飲み物をゴクゴクと大量に胃に流し込むのはよくありません。胃腸が水びたしになってしまいますから。胃酸も薄くなるので、食べものを消化するはたらきも落ちます。もちろん食欲もなくなります。冷たい飲み物のガブ飲みは控えましょう。
さて、はと麦は、その皮をむけば、湿気取りの漢方薬にふくまれる薬物、薏苡仁(よくいにん)です。イボ取り名人として活躍します。この薬物は、いろいろな漢方薬の中にふくまれていて、からだの中の余分な水分を取り去るはたらきがあります。ほとんど、はと麦=薏苡仁と考えていただいてよく、両者は似たもの同士です。しかし、はと麦の方がよりいっそう安価で、しかも同じようなはたらき、とくればどちらが便利かは言わずもがなですよね。できれば自然食品屋さんの良質なものをお求めください。味がちがいます。
はと麦茶の作り方は麦茶をつくるのと同じ要領です。沸騰させた1~2リットルのお湯に、はと麦を適量入れて、少し火を弱めて、5~10分煮出すだけです。最近は美肌効果もあるようなことがいわれ始めていますが、お肌の不要な水分を取り除くのですから、美肌効果はあって当然です。女性にはたいへんうれしい飲み物ですね。とくに足がむくみやすかったり、尿が出づらいなど、梅雨時や天候の悪化にともないからだの不調が現れやすい方におすすめです。
梅酢
梅酢は梅干しをつくるときにできる酸っぱい汁です。自家製の梅干しをつくられるのであればそのときにできますし、自然食品屋さんにも売っています。梅酢に豊富にふくまれるクエン酸は、疲労回復することでよく知られていますが、そのほかに殺菌するはたらきもあります。梅雨時から夏場にかけて、我が家ではごはんが傷むのを防ぐために使っています。ごはんを炊くとき、お米1カップに対して小さじ1杯くらいを加えます。これくらいの量ですと、酸っぱさを感じないので気になりません。
また梅雨になると湿気が多く、夜は蒸し蒸ししてよく眠れません。したがって本来、睡眠中に回復しているはずの内臓のはたらきもそれほど回復しません。睡眠不足や湿度の高さは容易にからだをだるくさせます。そのようなときには梅酢を盃に1杯お飲みになってみてください。それが酸っぱすぎて飲みづらいという方は、倍くらいに薄めて飲んでください。梅酢の酸っぱさには、からだの栄養吸収を助け、疲労を回復するはたらきがあるので、からだのだるさがとれてきます。梅酢で酢のものを作っても無理なく摂れていいですね。さらに梅酢は整腸のはたらきにも優れているので、夏場の下痢や軟便にも効果があります。梅酢がなければ梅干でもかまいません。いずれにしても、殺菌、疲労回復、整腸にすぐれた梅雨時におすすめのものです。
海草類(こんぶ、わかめ、のり、ひじき)
海草類にはからだの中にこもった熱を尿として排泄してむくみを解消するはたらきがあります。したがって梅雨時に尿が出づらい、むくみやすい方におすすめです。
こんぶはカルシウムや鉄分といったミネラルを豊富にふくみますが、酢といっしょに食べるとそれらの吸収がよくなります。したがって酢こんぶは理にかなっています。わかめときゅうりとしらすの酢のものは水分の代謝をうながし、栄養素も豊富で、そのうえさっぱりする一品です。
またひじきには多くのミネラルがふくまれます。カルシウムの量は、こんぶやわかめの二倍くらいあります。骨密度の低下が気になる方にとっても日ごろから摂ると良い食品です。ひじきを調理する際にも、酢を少し入れると栄養素の吸収が高まります。なお海草類に関しましては、少量では問題はないのですが、摂りすぎるとヨード性甲状腺腫になるおそれがあるので、甲状腺の病気の方はご注意ください。また胃腸が冷えると体調がよくない、冷え症や下痢を起こしやすい方は多量の摂取をお控えください。