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第52号 遺伝子検査(2017年4月)


 

今月は、どんどん進歩する医学を“ビジネス”に変えた遺伝子検査について考えてみます。

カエルの子はカエル、とはよく言ったもの。ヒトの子はヒトになり、父親と母親に似ます。これを遺伝といいます。そしてそれを支えるのが、遺伝子(DNA)です。
わたしたちのからだは、約60兆個の細胞からできているといわれます。それぞれの細胞は核をふくみ、核の中には染色体と呼ばれるものがあります。その染色体を顕微鏡でよくのぞくと、二本で一組の染色体にらせんを描き、一列にきちんとした順序で並んでいるものがあります。それが遺伝子(DNA)です。
遺伝子の研究が進むにつれ、心筋梗塞や糖尿病、高血圧症、認知症、肥満など、さまざまな疾病に特有の遺伝子タイプがあることがわかってきました。
この遺伝子をよく調べて体質を分析してアドヴァイスをするのが、遺伝子検査ビジネスです。なぜビジネスかといいますと、医療機関を通さずに、薬局やインターネットで気軽に検査キットを購入することができるからです。現在はメタボ対策、ダイエット対策、美肌対策などと称して、簡単な検査キットが販売されています。口の中の粘膜細胞を綿棒でこそいで送付するだけで、たとえば自分がどのようなタイプの肥満症でどのような食生活をおくればよいのかなどの報告書が遺伝子を検査する会社から送られてくるそうです。

 

本当にその結果をうのみにしても大丈夫なのでしょうか?
病気の要因について考えてみますと、明らかな遺伝病をのぞいて、遺伝的なものと環境的なものの大きく二つがあります。たとえば遺伝子のタイプが一致する一卵性双生児でも、食事や仕事などの生活環境がことなれば、発症する病気もことなるということです。
遺伝子検査はまだはじまったばかりです。ある遺伝子タイプがどのような食生活をしていたらどのような病気になる、というデータ、つまり遺伝的なものと環境的なものを合わせたものこそ信用に足る情報だと思います。臨床例の少ない情報も、“遺伝子”という先端科学の用語のおかげで信憑性が増してしまいます。この件に関しまして日本医学会は「十分に正確な説明や医学的根拠のない遺伝子ビジネスに対し、消費者庁などによる監視体制の確立や法整備などを求める」提言を行なっています。

 

遺伝子について考えさせられたニュースがもうひとつあります。2013年の5月、ハリウッド女優のアンジェリーナジョリーが乳房の切除手術を受けたというものです。母を56歳の若さで卵巣がんにより亡くしている彼女は、遺伝子検査を行いました。その結果、卵巣がんや乳がんにかかりやすいといわれる遺伝子の異常が見つかりました。この遺伝子に変異のみられる女性が生涯に乳がんにかかる確率は、アメリカのがん専門機関によると4割~8割。乳房を予防切除した場合には1割まで下がるといわれています。彼女の場合、将来的に乳がんになる可能性が8割以上、卵巣がんは5割という診断を受けました。そこで彼女は、がんの発症を防ぐために両乳房を切除するという選択をしました。38歳の決断です。

母の病苦を目の当たりにした彼女の決断を否定するつもりは毛頭ありません。この件に関しては、個人の意思が尊重されるべきものと思います。しかしこのような手術に代表される遺伝子診断がこれから先の「予防医学」になるのでしょうか。もしそのようになるとすれば身の凍る思いがします。先進医学は疑わしきは取り除き、危ない橋は決して渡ろうとしません。ちなみに両乳房を切除した彼女に残されたがんにかかる可能性はけっしてゼロにはなりません。
江戸時代の養生家、貝原益軒は「養生の道は多言の必要がない。ただ飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、色欲をつつしみ、精気を惜しみ、怒・哀・憂・思を過ごさぬようにする。心を平静にして気をやわらげ、口数を少なくし、無用のことをはぶき、風・寒・暑・湿の外邪を防いで、時どきからだを動かし、歩行し、寝るときでないのに寝たりしないで、食気の循環をよくする」と述べています。益軒は食生活、気の持ちよう、季節の変わり目に注意すること、適度な運動などを病を防ぐ方法ととらえていました。これこそが予防医学の真骨頂です。あまりにも速く進む先端医学にはくれぐれもご注意ください。

 

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