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第54号~梅雨におすすめの食品


梅雨になるとからだが重だるい、神経痛がでやすい、持病が悪化しやすい、という声をよく耳にします。じとじとして、爽やかな季節ではありません。

今回のコラムでは、梅雨を少しでも快適にすごして頂きたく、おすすめの食品についてお話しいたします。
「薬補(やくほ)は食補(しょくほ)にしかず」とは、健康のためには薬よりも食べものが大事、という意味です。『養生訓』の作者、貝原益軒は日々の食生活の大切さをこの言葉にこめました。梅雨になると、自然に同調するように、からだの水分代謝が悪くなります。それが様々なからだの不調を呼び起こす原因となります。みなさまも暮らしの中に湿気を取り除く食品をぜひ取り入れてみてください。

はと麦茶
はと麦茶はからだの余分な湿気を尿として出します。梅雨にもってこいの飲みものです。ふぅふぅと冷ましながら飲むくらい熱い温度が理想です。普段お茶を飲むときといっしょです。どんなに暑い気候でも冷たい飲み物をゴクゴクと大量に胃に流し込むのはよくありません。胃腸が水びたしになってしまいますから。胃酸も薄くなるので、食べものを消化するはたらきも落ちます。もちろん食欲もなくなります。冷たい飲み物のガブ飲みは控えましょう。
さて、はと麦は、その皮をむけば、湿気取りの漢方薬にふくまれる薬物、薏苡仁(よくいにん)です。イボ取り名人として活躍します。この薬物は、いろいろな漢方薬の中にふくまれていて、からだの中の余分な水分を取り去るはたらきがあります。ほとんど、はと麦=薏苡仁と考えていただいてよく、両者は似たもの同士です。しかし、はと麦の方がよりいっそう安価で、しかも同じようなはたらき、とくればどちらが便利かは言わずもがなですよね。できれば自然食品屋さんの良質なものをお求めください。味がちがいます。
はと麦茶の作り方は麦茶をつくるのと同じ要領です。沸騰させた1~2リットルのお湯に、はと麦を適量入れて、少し火を弱めて、5~10分煮出すだけです。最近は美肌効果もあるようなことがいわれ始めていますが、お肌の不要な水分を取り除くのですから、美肌効果はあって当然です。女性にはたいへんうれしい飲み物ですね。とくに足がむくみやすかったり、尿が出づらいなど、梅雨時や天候の悪化にともないからだの不調が現れやすい方におすすめです。

 

梅酢
梅酢は梅干しをつくるときにできる酸っぱい汁です。自家製の梅干しをつくられるのであればそのときにできますし、自然食品屋さんにも売っています。梅酢に豊富にふくまれるクエン酸は、疲労回復することでよく知られていますが、そのほかに殺菌するはたらきもあります。梅雨時から夏場にかけて、我が家ではごはんが傷むのを防ぐために使っています。ごはんを炊くとき、お米1カップに対して小さじ1杯くらいを加えます。これくらいの量ですと、酸っぱさを感じないので気になりません。
また梅雨になると湿気が多く、夜は蒸し蒸ししてよく眠れません。したがって本来、睡眠中に回復しているはずの内臓のはたらきもそれほど回復しません。睡眠不足や湿度の高さは容易にからだをだるくさせます。そのようなときには梅酢を盃に1杯お飲みになってみてください。それが酸っぱすぎて飲みづらいという方は、倍くらいに薄めて飲んでください。梅酢の酸っぱさには、からだの栄養吸収を助け、疲労を回復するはたらきがあるので、からだのだるさがとれてきます。梅酢で酢のものを作っても無理なく摂れていいですね。さらに梅酢は整腸のはたらきにも優れているので、夏場の下痢や軟便にも効果があります。梅酢がなければ梅干でもかまいません。いずれにしても、殺菌、疲労回復、整腸にすぐれた梅雨時におすすめのものです。

 

海草類(こんぶ、わかめ、のり、ひじき)
海草類にはからだの中にこもった熱を尿として排泄してむくみを解消するはたらきがあります。したがって梅雨時に尿が出づらい、むくみやすい方におすすめです。
こんぶはカルシウムや鉄分といったミネラルを豊富にふくみますが、酢といっしょに食べるとそれらの吸収がよくなります。したがって酢こんぶは理にかなっています。わかめときゅうりとしらすの酢のものは水分の代謝をうながし、栄養素も豊富で、そのうえさっぱりする一品です。
またひじきには多くのミネラルがふくまれます。カルシウムの量は、こんぶやわかめの二倍くらいあります。骨密度の低下が気になる方にとっても日ごろから摂ると良い食品です。ひじきを調理する際にも、酢を少し入れると栄養素の吸収が高まります。なお海草類に関しましては、少量では問題はないのですが、摂りすぎるとヨード性甲状腺腫になるおそれがあるので、甲状腺の病気の方はご注意ください。また胃腸が冷えると体調がよくない、冷え症や下痢を起こしやすい方は多量の摂取をお控えください。

 

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第53号~水分のとりかた(2017年5月)


初夏です。すごしやすい季節になりました。少しおもてを散歩するとかるく汗をかき、のどの渇きをおぼえる。そこでお水をぐっとのどに流し込む。「ふーっ」と大きく一息。とても気持ちのいい瞬間です。
いま飲んだ「お水」、わたしたちの体に必要なことは、本能としてわかっています。しかし、その理由となると、すぐには答えることができません。日本に住んでいるわたしたちにとって、身のまわりに水があることはあたりまえのこと。水道のコックさえひねればすぐに飲むことができます。しかし、ところ変わって砂漠地方に住む人たちにとって、水は金や石油よりも貴重なものです。なんの苦労もなく水を飲めたり、お風呂に入るなんてとてもぜいたくな話です。今いちど、たいせつな水に対して真摯に向き合って考えてみましょう。

わたしたちは「呼吸」という体に必要な活動を通じて、酸素を取り入れ、水と二酸化炭素をはき出しています。また運動すればもちろんのこと、じっとしていても汗として、また小便や大便として身体から水分を排出しています。したがって、水分を補わなければ、体がどんどん干からびるのは道理。生きてりゃ、のども渇き、水が飲みたくなる、というのはとても自然なことなのです。

さて、大ざっぱにみて、水、の役割は三つあります。
ひとつは、クールダウン。つまり水は冷やすためのもの。運動したあとや夏の熱気から体をひやします。そうして体温を一定にします。
もうひとつは、排泄。肝臓や肺、胃腸など、内臓がはたらくと体にとって必要のない“ゴミ”のようなものがでます。その“ゴミ”はおもに小便として排泄されます。しかし小便として出そうにも水がないとスムースにいきません。したがって、スムースな排泄のためにも水はたいせつです。
三つ目、体の中の水分の量を一定に保つ。つまり血液や消化液、細胞の中にふくまれる水分の量をだいたいいっしょにするため。たとえば体の水が足りなくなると、血液の中の水の量も少なくなります。すると血液の流れが悪くなったり、ゴミが溜まりやすくなり、血圧が高くなるなど命にかかわる血管系の病気の引き金になります。

これで水の必要性についてはご理解いただけたかと思います。水は体温を一定に保つ、尿や汗の排出をスムースにおこなう、体の中の水分の量を一定に保つために必要なものなのです。

最近は厚生労働省が推進する「健康のため水を飲もう運動」なるものがはやっています。「しっかり水分、元気な毎日」などの標語をつくって、水分補給をすすめています。なるほど、水の必要性は先ほどご説明しました。しかし、このような標語のためか、世の中には水をたくさん飲めば飲むほど健康に近づくと信じているかたも多くみかけます。ここに水のとり過ぎの弊害が生じています。
ぼくの治療院にも、水分をたくさん取っている方々がいます。かえってそのことにより、むくみ、頭痛、冷え、肩こり、尿がすっきり出ない、胃のむかつき、からだが重く朝すぐに起きられない、といった症状を訴えます。もちろん、すぐに水分の取り方をみなおしていただきます。そういう方々の舌には共通性があります。大きくて、ボテッとした感じで、舌の端に歯型がついていることです。また、脈をみると深く沈んでいて、なかなか拍動が伝わってきません。胃の中で水が動くチャポチャポとした音が聞こえたりもします。
体にとって大切な水も量がいきすぎてしまうとかえって“毒”になります。たとえば、子どもたちのように、しょっちゅうからだを動かしていると、汗をかき、たくさんの水分を欲します。その場合には、好きなだけ水を飲んでいただいてけっこうです。体の中を水がじゅうぶんにめぐるからです。またエネルギッシュな若者をみていると、ご飯を食べながら、水をゴクゴクと飲んでいます。そのことで胃酸は水で薄まりますが、じゅうぶんに食べものを消化します。それほど胃酸のはたらきが、すぐれているからです。ところが胃腸の悪い人やあまりからだを動かしてない人は、じゅうぶんに胃酸がはたらきません。食前や食後に水をたくさん飲んでしまうと、すぐに下痢や胃腸障害をおこします。ぼくの治療院では、このようなケースを“水毒(すいどく)”として治療します。このような方に対して、水分の代謝を調える鍼灸治療をおこなうと、胃腸のはたらきがよくなり症状が楽になります。また漢方薬では、茯苓、白朮、沢瀉などで胃腸のはたらきを調え、尿をすっきり排泄させます。
これから本格的に暑い夏が始まります。水分を取ることは決して欠かすことができません。しかしそれほど熱がりでない人やあまりからだを動かさない人が、“健康のために”のどの渇きを感じないまま、たくさんの水分を取ることが体にとってよくないことをおわかりいただけましたか。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とはまさにこのことです。つけくわえるなら、体に入れる水分はあまり冷たすぎてもいけません。せっかく飲んでもすぐに汗に変わってしまいます。また胃腸を冷やして、消化のはたらきが落ちます。常温のものを、のどの渇きを欲したときに、ゆっくりと口にふくむように飲みくだします。そのようにして体に入れる水分は、尿となり、からだの中の熱を外に出してくれます。夏には、温かい麦茶、スイカ、きゅうり、トマトなどで水分を補給しましょう。

 

 

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第52号 遺伝子検査(2017年4月)


 

今月は、どんどん進歩する医学を“ビジネス”に変えた遺伝子検査について考えてみます。

カエルの子はカエル、とはよく言ったもの。ヒトの子はヒトになり、父親と母親に似ます。これを遺伝といいます。そしてそれを支えるのが、遺伝子(DNA)です。
わたしたちのからだは、約60兆個の細胞からできているといわれます。それぞれの細胞は核をふくみ、核の中には染色体と呼ばれるものがあります。その染色体を顕微鏡でよくのぞくと、二本で一組の染色体にらせんを描き、一列にきちんとした順序で並んでいるものがあります。それが遺伝子(DNA)です。
遺伝子の研究が進むにつれ、心筋梗塞や糖尿病、高血圧症、認知症、肥満など、さまざまな疾病に特有の遺伝子タイプがあることがわかってきました。
この遺伝子をよく調べて体質を分析してアドヴァイスをするのが、遺伝子検査ビジネスです。なぜビジネスかといいますと、医療機関を通さずに、薬局やインターネットで気軽に検査キットを購入することができるからです。現在はメタボ対策、ダイエット対策、美肌対策などと称して、簡単な検査キットが販売されています。口の中の粘膜細胞を綿棒でこそいで送付するだけで、たとえば自分がどのようなタイプの肥満症でどのような食生活をおくればよいのかなどの報告書が遺伝子を検査する会社から送られてくるそうです。

 

本当にその結果をうのみにしても大丈夫なのでしょうか?
病気の要因について考えてみますと、明らかな遺伝病をのぞいて、遺伝的なものと環境的なものの大きく二つがあります。たとえば遺伝子のタイプが一致する一卵性双生児でも、食事や仕事などの生活環境がことなれば、発症する病気もことなるということです。
遺伝子検査はまだはじまったばかりです。ある遺伝子タイプがどのような食生活をしていたらどのような病気になる、というデータ、つまり遺伝的なものと環境的なものを合わせたものこそ信用に足る情報だと思います。臨床例の少ない情報も、“遺伝子”という先端科学の用語のおかげで信憑性が増してしまいます。この件に関しまして日本医学会は「十分に正確な説明や医学的根拠のない遺伝子ビジネスに対し、消費者庁などによる監視体制の確立や法整備などを求める」提言を行なっています。

 

遺伝子について考えさせられたニュースがもうひとつあります。2013年の5月、ハリウッド女優のアンジェリーナジョリーが乳房の切除手術を受けたというものです。母を56歳の若さで卵巣がんにより亡くしている彼女は、遺伝子検査を行いました。その結果、卵巣がんや乳がんにかかりやすいといわれる遺伝子の異常が見つかりました。この遺伝子に変異のみられる女性が生涯に乳がんにかかる確率は、アメリカのがん専門機関によると4割~8割。乳房を予防切除した場合には1割まで下がるといわれています。彼女の場合、将来的に乳がんになる可能性が8割以上、卵巣がんは5割という診断を受けました。そこで彼女は、がんの発症を防ぐために両乳房を切除するという選択をしました。38歳の決断です。

母の病苦を目の当たりにした彼女の決断を否定するつもりは毛頭ありません。この件に関しては、個人の意思が尊重されるべきものと思います。しかしこのような手術に代表される遺伝子診断がこれから先の「予防医学」になるのでしょうか。もしそのようになるとすれば身の凍る思いがします。先進医学は疑わしきは取り除き、危ない橋は決して渡ろうとしません。ちなみに両乳房を切除した彼女に残されたがんにかかる可能性はけっしてゼロにはなりません。
江戸時代の養生家、貝原益軒は「養生の道は多言の必要がない。ただ飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、色欲をつつしみ、精気を惜しみ、怒・哀・憂・思を過ごさぬようにする。心を平静にして気をやわらげ、口数を少なくし、無用のことをはぶき、風・寒・暑・湿の外邪を防いで、時どきからだを動かし、歩行し、寝るときでないのに寝たりしないで、食気の循環をよくする」と述べています。益軒は食生活、気の持ちよう、季節の変わり目に注意すること、適度な運動などを病を防ぐ方法ととらえていました。これこそが予防医学の真骨頂です。あまりにも速く進む先端医学にはくれぐれもご注意ください。

 

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第51号 花粉症って何?(2017年3月)


3月に入ると花粉症の話題がいやでも耳に入ってきます。季節が変わり、気温が高くなると、花粉はパートナーを求め、空をただよって飛んでいきます。空気中にただよっている以上、それをまったく防ぎきることはできません。しかし花粉を吸いこんでも花粉症になる人とならない人がいます。いったいどうしてでしょう。花粉症になりやすい人の免疫のはたらき、および現代医学と漢方との治療法の違いについてお話しいたします。

 

人にはからだに異物が侵入したときに追い払うシステムがそなわっています。それを広い意味で“免疫”といいます。もちろん花粉は異物です。花粉のような異物がからだに入ると、免疫のはたらきにより、それに対する武器のようなものがつくられます。それを“抗体”と呼びます。そしてつぎに入ってきた花粉とひっつき、戦います。それがからだに都合よくはたらくとき、狭い意味で“免疫”といいます。ところがからだに都合が悪く、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状をともなうとき、アレルギー=花粉症といいます。つまりアレルギーも広い意味の免疫に含まれます。人が花粉症になるのは、ある意味自然の成り行き、免疫のはたらきが行き過ぎてしまった結果といえるのです。

 

花粉症のときに、からだの鼻や目の粘膜では何が起こっているのでしょうか。花粉症は行き過ぎた免疫といいました。しかし花粉に侵入されたらすぐに症状が現れるわけではありません。準備段階があります。まず鼻や目の粘膜に花粉がひっつくと、その成分がからだの粘液に溶けだします。その溶けたものが、マクロファージという免疫細胞にとりこまれてはじめて異物と認められます。ここから免疫が作動をはじめます。この情報が、やはり免疫システムのひとつであるリンパ球に伝えられて、異物に対抗する抗体がつくりだされます。これが「Ige(アイジーイー)抗体」と呼ばれるものです。この抗体が、鼻や目の細胞につぎからつぎへ結びつきます。その抗体の量がある一定の域を越えたとき、免疫反応の準備が調います。この状況に花粉が入りこんでくると、花粉とIge抗体との戦いが始まります。その過程で細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質がつぎつぎにはきだされます。それが鼻や目の神経を刺激したり、血管の壁の水分の出入りを多くします。そのためにくしゃみ、鼻水、鼻や目のむずがゆさ、鼻の粘膜のむくみによる鼻づまりなどの症状を引き起こします。

 

花粉症になる人とならない人の差、花粉症になる人というのは、Ige抗体をつくり過ぎてしまい、ヒスタミンに対して過敏に反応するようです。花粉症にならない人は、適度な量のIge抗体をつくり、ヒスタミンに対してあまり過敏に反応しません。両者にはこのように異物に対する反応に大きな違いがあります。なお、現代医学では花粉症に対して、ヒスタミンなどの化学伝達物質の放出を阻止する抗アレルギー剤とヒスタミンのはたらきを抑える抗ヒスタミン剤が用いられます。いずれの薬も眠気、だるさ、胃腸障害などの副作用をともないます。またステロイド剤のような強力な炎症を鎮める薬により、さまざまな症状に悩まされる場合もあるようです。

 

さて漢方では花粉症を、くしゃみ、鼻水や目ヤニなどの排泄物の状態と、それにともなう全身の症状から判断します。たとえば鼻水が透明でさらさらしており、冷たい空気に触れるとくしゃみや咳が出やすい、いつも手足が冷たく、寒がりで厚着をしているようなとき、“寒証(かんしょう)”と呼び、からだを温める薬をお出しします。また黄色い鼻水、粘る目ヤニ、鼻・目・耳などのかゆみが強い、目が赤く充血している、手足がほてり、暑がりのとき、“熱証(ねつしょう)”と呼び、からだの熱を冷ます薬をお出しします。あるいは疲れ、だるさ、倦怠感などが著しく、気力が失せているようなとき、“気虚証(ききょしょう)”と呼び、気力の低下を補う薬をお出しします。つまり、花粉症に対して一律ではなく、それぞれの方の体質に合ったものをお出ししています。もちろんこれらのタイプがいくつか重なることもあります。そのときには、それに合わせてふさわしい薬をお出しします。

すでにお気づきかもしれませんが、漢方ではアレルギー、ヒスタミンといった現代医学の考え方は用いません。「からだのかたよりをなくすこと」を最大の治療目標とします。具体的には、冷え症であればからだを温め、暑がりの方はその熱を冷まし、気力が不足していればそれを補うお薬をお出しして症状を改善させます。花粉症に関しては、症状を押さえこむのではなく、アレルギー反応を弱めて、からだに都合よくはたらく免疫を作動させます。対症療法ではなく体質改善を目指します。抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤で、どうしても眠気が強く出て困っている方が多いようですが、漢方薬ではそのような心配はありません。いろいろな薬をためして効果がないような方にもおためしになっていただく価値は十分にあります。

 

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第50号~輭酥(なんそ)の法(2017年2月)


 

江戸時代に白隠(はくいん)というお坊さまがいらっしゃいました。静岡県は沼津市の原で生まれ、その当時は落ちぶれていた臨済宗を復興するなどたいそう立派な方でした。
「駿河には過ぎたるものが二つあり、富士のお山に原の白隠」などと富士山と並び称されていました。
今回のコラムでは、そんな白隠さまが世に広めた健康法についてご紹介してまいります。その名を「輭酥(なんそ)の法」といいます。禅を行うと同じ姿勢でじっとしているため、いわゆる「禅病」にかかる人が出てきます。頭がのぼせる、手足や腰が凍りつくように冷える、耳鳴り、消化不良、精神疲労などのことです。今回ご紹介する健康法は、このような病の治療にたいへんな効果を発揮しました。輭酥(なんそ)というのは、牛乳が凝固したもの、その軟らかく澄んだ上澄み液のことです。バターとかチーズのようなものと思ってください。

健康法と言っても身体を動かすわけではありません。じっと座って、想像、イメージで進行します。しっかり集中することができれば、すばらしい健康法となります。その本体が何であれ、病気が治るという身体のメカニズムには、こころという観念的な世界が結びついているからです。「信じ」、そして「続ける」ことで身体は変化します。最初は5分、10分くらいからはじめます。慣れていくにしたがい、徐々に時間をのばして30分くらいかけます。

まずは輭酥(なんそ)、このバターのようなものを大きめの卵くらいに丸く固めたものをイメージしてください。とてもいい香りがします。それを頭の上に乗っけたところから、想像力をつかった健康法は始まります。心の動きにもとづいて、バターのようなものを体温によってしだいにとかし、頭から身体の至るところに浸透させ、流れ落ちるように観念することにより、内臓の痛み、しこり、違和感などを下降させます。バターのようなものは決して速く流れません。ゆっくり浸透します。身体をまんべんなくめぐり流れ、両脚を温かに潤して足の裏の土ふまずにいたって止まります。これがすべて、心の動き、想像によりとり行われます。身体はじっとしたままです。

「輭酥の法」
背骨をまっすぐにして、椅子に腰かけて目をつむり心を落ち着かせます。
呼吸はゆったりと、腹式呼吸で、吐く息を長めにします。
頭のちょうどてっぺんに卵のような形をしたものがのっかっています。
わりとずっしりとして重量感があります。
中身は、とろとろのバターのようにねっとりしてとてもいい香りがします。
それがあなたの体温で徐々に温まり、とけて流れ出します。
ゆっくりと頭全体を潤して、しんしんと下っていきます。
両肩、両腕、両乳、胸の間、さらに内臓の肺、肝臓、食道、胃腸、背骨、尾骨までも包みこむように潤します。
この際、身体の中に痛むところ、違和感のあるところ、しこりのあるところ、気になっているところなどがある方は、そこを何べんもねっとりとしたいい香りのものが潤しているようにイメージします。
やがてそれは骨盤の中の臓器、生殖器、足をゆっくり下り、足の裏へとたどり着きます。手足は温かく、身体も台風一過の青空のようにすっきりしています。

白隠さまにこの健康法をさずけたのが白幽仙人です。そのあと「わたしは今あなたに一生用いても用いきれぬ秘伝についてお話した。これ以上もはやお教えすることはない」と語ったそうです。仙人がそう語ったのです。この事実はとても重大です。この瞑想法は体力がない虚弱な方に大きな効果をもたらします。白隠さまは、この健康法でご自身の肺病を克服しました。『遠羅天(おらて)釜(がま)』『夜船(やせん)閑話(かんな)』などの禅宗の理論で書いた多くの著作を残しています。

 

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第49号~お風呂は注意して(2017年1月)


先日新聞で入浴関連死について書かれた記事をみかけました。一年間でおよそ一万数千人の方々がお亡くなりになっているようです。原因はお風呂に入ってから出るまでの間におこる血圧の急変動にあります。柔軟性を失い、古くなった血管は、その変動にとても対応できません。具体的には血管が破れる、あるいは血管にゴミ(血栓)が詰まるなどがおこります。このようなことが脳や心臓でおこればまちがいなく命の危険にさらされます。
お風呂に入る場合には、まず脱衣所で裸になります。そのときに冬であれば寒さによる緊張で血管が細くなり血圧が上がります。もし風呂が熱すぎる温度であれば、お湯に入るとさらにからだに力が入り血圧が上昇します。しばらくお湯につかっているとほっとリラックスして血圧が低下します。気持ちがいいひとときです。でも気持ちがいいのはここまで。お湯からあがるとまた寒い脱衣所での着替えが待っています。もちろんまた寒さによる血管の収縮で血圧が上がります。これでは血圧のジェットコースターのようなものです。上がったり下がったりまた上がったりで血管がその変化についていけません。とくに血圧が低いところから上昇するタイミングが要注意です。高齢者の血管は、かたかったり、その内側もささくれ立ったりしています。お湯につかり血管が広がっているところに、脱衣所の寒さにより急に血管が縮まる。そこに大量の血液がスピードを上げて流れ込むと、血管が破れる、あるいは内側から、かすが流れ出し、詰まるなどの危険が高まります。
あたりまえのように入浴していますが、血管の収縮と拡張の観点からみると冬場にはとても大変な行為です。脱衣所の温度はできるだけ、高く設定して入浴による温度変化を最小限にしたいものです。集合住宅などは、比較的温かい環境にありますが、一戸建ての家はすきま風が入り込みやすいのでヒーターなどの暖房器具を設置することをおすすめします。一番危険なのが飲酒の後の入浴です。このような習慣は早めにやめておいた方が身のためです。また湯あがりに冷えた風に当たらないでください。脳卒中や心筋梗塞の危険が高まります。

では、冬におすすめの入浴法です。
1.脱衣所や浴室内は前もって温めておく。できれば一番風呂は避ける。
2.入浴時間は短めにする。お湯の温度はぬるめが無難。
3.お酒を飲んだ後などのように、のどが渇いた状態での入浴はひかえる。

* もし可能であれば…冬になったらお風呂は温かい入浴施設で昼間入る。

 

これまで、お風呂の嫌なところばかりお話ししてきましたが、お風呂は血液循環を改善するとてもすぐれたものだと思っています。よく眠れるようになりますし、気分転換もでき、なにしろ気持ちがいいものです。個人的には平均寿命が世界的にトップレベルなのはお風呂がひとつの要因ではないかと思っています。ただし、冬には注意する必要がある、というお話をさせていただきました。

 

 

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第48号~かぜを防ごう(2016年12月)


秋から冬になるとすぐにカゼを引いてしまう方がいらっしゃるので対策をねってみましょう。
なるほどたしかに、わたしたちのからだの中には、たえず細菌やウイルスなどが侵入してきます。冬は空気が乾燥しているのでウイルスなどの勢いも増しています。しかし、そのたびごとに病気になっているわけではありません。からだには、侵入してきた悪いものを退治する機能がそなわっているからです。それを免疫といいます。東洋医学ではこれと同じようなはたらきをそなえる機能を「衛気(えき)」と呼びます。衛気は汗とともにからだ全体を温め、つつむようにガードしています。ここで使われている「衛」という字は、護衛、守衛、防衛など、周囲を巡回してまもるという意味をもちます。

 

東洋医学の古典には、秋に活動しすぎてたくさん汗をかいてしまうと冬に病気になりやすい、というようなことが書かれています。人間というものは汗をかくとからだが冷えるしくみになっています。夏であればそれは必要なことです。しかし、秋から冬にかけてたくさんの汗をかくと、外の気温の影響から、からだが冷えを受け入れてしまい簡単にカゼを引きます。古典の記載は、汗をかくこと自体は悪いことではないが、季節によりその量は調節すべき、という忠告です。なぜ汗のかき過ぎが時にからだに良くないかというと、汗とともにからだをまもる「衛気」が大量に出ていくと考えるからです。ふだん衛気は、からだを取り囲んで悪いものが入ってこないようにガードしてくれています。たとえ悪いものが入ったとしてもそれと闘い、追い払います。そのような衛気が、一度に汗とともに大量に出て行くと、国境警備が仕事をさぼるようなもので、からだにスキができます。そのスキにつけこんで、細菌やウイルスが侵入するために、カゼを引いてしまうわけです。

 

とかく、汗をかくことがお肌を美しく保ち、無条件にからだに良いことのように思われているふしがあります。その証拠に、美容のため、という理由で多くの女性が岩盤浴やサウナなどを利用します。しかしサウナの発祥は北欧であり、本来は雪や寒さなどにより屋外で運動して汗をかくことができない人たちの新陳代謝をうながすものです。わたしたちのように四季のはっきりした国に住むものは、からだを動かして汗をかくことに重きを置いたほうがよさそうです(サウナ好きの方、すみません)。季節を考えずにむやみにからだをまもる汗を排泄するのは健康をそこなうことにつながります。もともと暑がりで体力がある人であればそれもけっこうです。飲食物からふたたび汗や衛気をつくりだすことが容易だからです。しかし代謝の悪い、むくみやすい、冷え性の女性がダイエット目的で多量の汗をかいていくと、身体から衛気がどんどん抜けてしまい、冷えが加速します。このような症例は、私の臨床において、とても多くみられます。東洋医学では、汗はからだを潤す単なる水分ではなく、からだをガードして悪いものから防ぐ、エネルギーなのです!そのようなエネルギーをつくりだすには、内臓を使ったそれなりの労力が要ります。ざっくばらんに言ってしまうと、汗を作るのはからだにとってかったるいことなのです。スポーツ飲料や麦茶などを飲めばすぐに作られるものではありません。秋から冬にかけてなど、外気が冷たいころは、多量の汗をかくことを慎みたいものです。

 

さて、ここからはカゼの防ぎ方です。カゼを引きやすい人は、乾布摩擦を始めましょう。皮膚を摩擦することで、衛気のはたらきは強化され、カゼを引きづらい体質に変わります。
また背中にぞくぞくするような寒気を感じた時には、背中と首の付け根にある大きな背骨を中心としたところにドライヤーの温かい風をしばらく当てておきましょう。5分ほど温めておくと、カゼの引きはじめであれば回復することをしばしば経験します。東洋医学では、風邪が背中と首の付け根にある大きな背骨の辺りから入ってくると考えます。カゼの引きはじめにその辺りをじっくり温めて、じわっと汗が出ると寒気が抜けます。背中がぞくぞくするときにその辺りの皮脂を石鹸でしっかり洗ってしまうと垢とともに衛気も失うために、カゼが入り込みやすくなるので注意して下さい。
さらに、膝から下を冷やさないように心がけます。とくに靴下は大切なアイテムです。絹でできた五本指のものを履き、さらにその上に絹の靴下を重ね履きします。またレッグウォーマーなどを上手に使い、膝下がスースーしないように注意しましょう。しそ、しょうが、ねぎは発汗作用があり、カゼ引きそうかなあ、というようなときに食べると予防効果があります。れんこん、ぎんなん、やまいもなどもふだんから食べていると衛気を強くするのでカゼの予防にすぐれます。

 

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第47号~足湯(2016年11月)


今回のコラムでは、冬に身体をあたためる足湯の効能について三つにまとめてお話ししていきます。このコラムをお読みになった方が、足湯を実行して下さったらとてもうれしく思います。

 

効能その1:温める
冬になると湯たんぽを手放せなくなる方がいらっしゃいます。足先が冷えてしまい眠れなくなるからです。そもそも足先は、循環する血液の量が少ないところです。血液には身体を温めるはたらきもあるため、血液の流れる量が少ない足先は冷えやすい部分といえます。また、そのような部分は、身体の老廃物が溜まりやすく、それを放っておくと通過障害を起こし、むくみが発生する原因ともなります。そのような方は一度足湯をしてみて下さい。足をお湯につけると真っ赤になります。それにより、足先の血管はふくらみ、たくさんの血液が通過して、老廃物が循環します。お風呂に入り、全身が温まったときより、足に集中する温かさがたいへん気持ちのいいものです。冷えが原因の膝の痛み、腰痛などに悩まされている方にはとても効果のある治療法といえます。

 

効能その2:風邪を治療する
足湯は風邪のひきはじめにとても効果があります。背中がぞくぞくして、寒気があり、汗が出ていないときが最適です。お風呂に入るときのように、着替えの際、裸になることもないので、寒気に当たらずにすみ助かります。せき、たん、鼻づまり、からだのふしぶしが痛むときは、肺の風邪です。足首のくるぶしの上5cmくらいから下を温めます。また食欲不振、はきけ、腹くだしなどの症状があるときは胃腸の風邪です。膝から下を温めます。いずれの風邪の場合も、浴室をよく温めて、身体から汗が少しにじんでくる程度で終了します。

 

効能その3:内臓を休めて免疫力を上げる
身体というのは、命ある限りいつも熱を発しています。これが生命現象というものです。その熱の源は内臓です。もちろん筋肉でも熱を発生しますが、やはりその熱源も内臓の一つである肝臓です。私たちが、お風呂や足湯が心地いいと感じるのは、外部から熱が加わることで、内臓の発熱する仕事が楽になることも理由の一つと思われます。足湯をすることで、内臓は、本来であれば発熱に費やすエネルギーを、ほかの仕事に回すことができるのです。したがって、余力が出てきて、身体の中に悪いものが入り込みにくい。また、たとえ入ったにせよ、撃退することが容易になります。これが足湯で免疫力が上がる所以です。

ここから、足湯の実際です。用意するものは、両足をゆったり漬けることのできる桶、お湯、熱湯を入れたポット、温度計、雑誌、お気に入りの音楽などです。ややぬるめの温度のお湯からスタートします。ならし運転です。身体に熱を加えようとする場合、いきなり熱すぎる温度のお湯に漬かるのはよくありません。40℃くらいからはじめた方が深いところまで熱が浸透します。その後、ヤケドをしないように、ポットの熱湯を加えて、温度を上げていきます。最終的には、ふだんお風呂に入るときよりも3~5℃温度をあげます。時間的には15分を目安にして、身体からじんわりと汗が出はじめたら足をお湯から上げます。

 

ポイントです。
お湯から上げた両足をじっくり観察してください。体調が悪いときは、どちらかの足の赤みがうすくなっています。そこで、赤みのうすい方の足だけをもうしばらくお湯につけます(5分を目安に)。両足の色がそろえば終了です。水分が残らないようにゆびの間までたんねんにふきとります。すぐに靴下をはいてコップ一杯の白湯を飲みます。足湯の後の水分補給は、汗で失われた水分を補うと同時に、尿量を増やし老廃物をスムースに排泄する意味をもちます。風邪の引きはじめの場合は、首のまわりを冷やさないようにタオルなどを巻いて眠りにつくと、翌朝かなり症状が楽になっています。体調が悪いときは用意がたいへんなので、元気なときにお試し下さい。お湯の温度はだんだん下がってくるので、かたわらに熱湯をいれたポットをそなえて、足し湯をしながらお湯の温度を一定に保ちましょう。

なお、ご病気により、足湯することがふさわしくない方がいらっしゃいます。ご心配の方は、主治医とご相談の上、行なってください。

 

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第46号~こりの原因(2016年10月)


わたしたちの体には、どうして「こり」ができるのでしょうか。ほとんどの「こり」は筋肉にできます。キーワードは酸素です。

まず、筋肉のお話からします。わたしたちは、筋肉が伸びたり縮んだりすることで、座る、立つ、歩くなどの動作をおこなっています。筋肉にはたくさんの血管が網目のように入りくんでいます。筋肉は、その中をめぐる血管にたくさんの酸素が含まれていてこそじゅうぶんにはたらきます。
では血液のルートをたどってみましょう。はじめに酸素をたっぷりとふくんだ血液が心臓からやってきます。そのおかげで筋肉は柔軟性を保ち、わたしたちは、座る、立つ、歩くなどの動作をおこなっています。筋肉がはたらいたあとには、残りかすのようなものがでますが、その残りかすは血液の流れにそって腎臓や肺に運ばれ、体の外に排出されます。そのようなサイクルのもと、筋肉ははたらいています。
わたしたちが買い物をして重いものを持ったり、長い距離を歩いたり、ご近所の方と長いあいだ立ちっぱなしで話していると筋肉は疲れ、その中にふくまれる酸素はだんだん少なくなってきます。いつも同じ姿勢でいたり、同じような動作をくりかえしていても同じことです。筋肉にふくまれる酸素が足りなくなってくると、乳酸などの残りかすがたまりやすくなります。このような残りかすの蓄積がきっかけとなり、からだに痛みを感じさせる物質が発生します。
これまでのところを整理してみましょう。筋肉がはたらくためは酸素が必要です。筋肉がはたらいた後には乳酸などの残りかすが出ます。残りかすがたくさんたまってくると、からだに痛みを感じさせる物質が発生する。と、こうなるわけです。とても悪い流れですね。
さて、痛みを感じさせる物質が発生しても、はじめのうちはそれほど痛みを感じません。すこし違和感をおぼえる程度です。ところが筋肉はストレスをおぼえ、緊張してきます。このようは状態のとき、わたしたちは「張った」感じをおぼえます。じつは、このようなときに「こり」が少しずつ生じているのです。さきほど筋肉にはたくさんの血管が網目のように入りくんでいる、と言いました。そのような筋肉が緊張してかたくなると、その中の血管も圧迫され、血液がうまく流れません。そうすると、さらに筋肉はストレスをおぼえます。これが悪循環の始まりであり、「こり」が発生するメカニズムです。

 

いつも疲れていたり、お年を召してくると筋肉にふくまれる酸素はふだんから多くありません。当然、乳酸などの筋肉がはたらいた後の残りかすがたまりやすくなります。痛みを起こす物質も発生しやすい状況です。それにより、筋肉は緊張し、筋肉の中の血管も圧迫されて血液の流れが滞ります。結果的に、新しい酸素を含む血液が入ってこなくなり、残りかすも出ていかない、という悪循環におちいります。筋肉の中にたくさんの酸素が含まれていて、残りかすがきれいに運び去られていれば「こり」は生じません。かんたんに言ってしまうと、血液の入れかわりさえスムースであれば「こり」は発生しないのです。

 

これまでお話ししたように「こり」は筋肉をめぐる血液がうまく入れかわりできなくなったことで発生します。それからそうとう長い年月をかけて成長します。ですから、いったんできてしまった「こり」を消滅させることは、とてもやっかいなことなのです。じっさいに治療をしていて感じることですが、がんこな「こり」をきれいさっぱり解消することは限りなく不可能に近いことです。ただし、そのつらさであれば改善することができます。ゆったりとした呼吸とともに行われるストレッチやマッサージで、筋肉にじゅうぶん酸素をふくんだ血液をおくればいいのです。そのことで筋肉はまた柔らかさを取り戻します。ストレッチは、吐く息を長く、筋肉が伸びて心地よく、ほんの少し痛い程度にします。ひとつの筋肉を伸ばすのに45秒~60秒ほどの時間をかけます。この秒数を守ることがポイントです。マッサージも、少し痛くて気持ちのいいくらいの強さでゆっくり施術してもらうとよく効きます。みなさんも治療を受けられる際には、ゆったりとした心もちで筋肉に酸素をおくるイメージをもたれてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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第45号 ~ 消す(2009年7月)


0907漢方では、からだに不要なものを消し去る治療法を用います。
それを「消法(しょうほう)」といいます。
からだに不要なものと言ってもさまざまですが、今回は梅雨の季節にちなんで、からだの不要な水分を取り除く治療法と、その有効なツボについて話をすすめていきます。

 

蒸し暑い日が続きます。こんな気候のときは、誰しもからだがだるく感じます。
なおのこと、からだに余分な水分をかかえている人は、重い感じをともないます。
そもそも水という物質は温度変化に敏感に反応するという性質をそなえます。
その水を余分にかかえている人が、寒がりの暑がり、というのは当然のことなのでしょう。
見ていると、からだに余分な水分をかかえている人というのは冷暖房に敏感に反応します。
少し動くとからだに熱がこもり、冷房の風に吹きつけられるとあっという間にからだが冷えていきます。

 

さて漢方で、からだの不要な水分を取り除く治療法とは、どのようなものなのでしょうか?
からだの水分代謝をととのえる中心となる内臓に、「脾(ひ)」と「腎(じん)」というものがあります。
脾は食べものや飲みものに含まれる水分をからだ中にめぐらせます。腎はからだをめぐり、不要となった水分を尿としてからだの外に排出させます。
このふたつの内臓がうまくはたらかなくなると、からだの中を水分が上手にめぐらなくなります。
すると、からだや頭が重くなったり、むくみが生じたり、尿が出づらくなったり、お腹が脹ってきたり、体重が増えるといった症状が現われてきます。
漢方ではこれらの症状に対して、内臓の脾と腎をととのえる治療法を行います。
そうすれば、からだの不要な水分が尿として排泄され、水はけの良いからだに変化します。
からだの不要な水分を取り除く方法とは、内臓のはたらきをととのえることにほかならないのです。

 

鍼灸治療においては、陰陵線(いんりょうせん)というツボが活躍します。
その位置は内くるぶしから、膝に向けて太い骨をのぼっていくと、その骨が急に角度を変えるところにぶつかります。
その部分を押してみて、にぶい痛みがあれば正しい位置にツボを取れています。
このツボは内臓の脾と腎と深くかかわり、それらの内臓のはたらきを調整します。
からだがだるい、尿が出づらい、むくみなどの症状のときに簡単なお灸をすえてみましょう。
症状が軽くなります。

 

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