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第20号 ~ 蔵象(2007年6月)


0706数年前、乙武洋匡さんの「五体不満足」という本がベストセラーになりました。
乙武さんは両手両足のない、先天的に四肢が切断された状態で生まれました。
乙武さんもそう考えたように、現在は「五体」のことを頭と両手・両足のこと、と考えます。
そのように考えると、乙武さんは五体のうち四体がない状態で人生をスタートしたことになります。

 

一方、東洋医学的にいう「五体」とは筋肉・血管・肌・皮膚・骨のことを指します。
量的な問題はあるにせよ乙武さんは五体のいずれをも失っていません。
もちろん、そのうちのどの一体を欠いても私たちは生きていくことができないでしょう。
このように東洋医学では、基本概念においても全体性を大切にします。

 

さて今回は、蔵象(ぞうしょう)についてお話していきます。
みなさんもこんな経験はありませんか?
想像してください、冬の寒い中、仕事を終えて、お腹をすかせてお家に帰ります。
そして、熱いみそ汁をふうふうしながら、胃に流しこみます。
「あ~、五臓六腑(ごぞうろっぷ)にしみわたる」
こんなセリフをつい口にしたくなりますよね。
東洋医学では、このセリフの中のとくに五臓を中心にからだが構成されていると考えます。
その考え方を蔵象といいます。

 

からだをひとつの会社に例えて考えてみましょう。
この会社には社長はいません。
会社の運営は五人の幹部が相談することで取り仕切っています。
五人の幹部にはそれぞれ、信頼関係の厚い部下がそろっています。
直属の部下、その下の部下、そのまた下の部下というように末端の部下にいたるまで、五人の幹部の命令がよく伝わるように組織されています。
この会社の頂点に君臨する五人の幹部が、先ほど登場した五臓(肝・心・脾・肺・腎)です。

 

そしてその部下たちが、五腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)であり、五体(筋肉・血管・肌・皮膚・骨)であり、五官(目・舌・口・鼻・耳)になるわけです。
この会社には縦の命令がよく行き届くと同時に、横の連係もしっかりしているという特徴があります。
この会社のように五臓を中心として、ヒトのからだのすみずみまで統制がとれている、とするのが蔵象の考え方です。

 

蔵象でいう五臓は、現代医学でいう解剖学的な臓器よりもかなり広い意味を含むという特徴もあります。
たとえば五臓のうちのひとつである心は、現代医学的な心臓のはたらきだけを指すのではなく、大脳や脈のはたらきを包括したものと理解されます。
このように少し広い枠組みで、生理的なはたらきを重視して、五臓は意味づけられています。
また肝のやまいが春によく起こるように四季の変化と五臓のやまいは深く関わるという特徴もあります。
自然界とかけはなれたところに五臓は存在することができません。
五臓を中心にからだは統一されて、さらに五臓が四季の変化にも対応しているというのが蔵象の考え方です。

 

元氣堂通信 第20号 蔵象   コメント:0