第24号 ~ 病因(2007年10月)
東洋医学を生業とする先人は悩みました。
人はなぜやまいに倒れるのだろうか?
そこには一体どんな原因があるのだろうか?と。
その答えとして、中国の宗の時代の医師、陳無擇は病気の原因を三つに分類しました。
今月は、東洋医学で病因(びょういん)とよばれる、病気の原因についての考え方をお伝えします。
そのひとつは環境の変化を原因とするものです。
私たちは四季の移り変わりのなかで生活しています。
春は暖かく、風が強い季節です。
夏は猛暑に加えて、湿気のある季節です。
秋はさわやかな季節です。空気もからっと乾燥しています。
冬は寒く、身も凍る季節です。
このように私たちは四季のめぐりのなかで日々を過ごしています。
当然のことのように暮らしていますが、このような四季の変化の中でこそ、今口にしている野菜は育っています。
ところが気候というものは、突然あるいは激しく変化することがあります。
このような環境の変化に、私たちのからだは大きく影響を受けます。
そして、その変化に耐えられなければ発病してしまいます。
東洋医学では、このような発病の原因となった邪気をそれぞれ、風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・熱邪とよび六淫(ろくいん)あるいは六邪(ろくじゃ)とよびます。
六淫はいずれも口、鼻あるいは体表から体内に侵入して病気の原因になります。
二つめは精神の不調を原因とするものです。
朝起きてから夜床につくまで、実にさまざまなできごとがあります。
作家の田辺聖子さんならば、ある一日の感情の変化をもとに、小説一本を書き下ろしてしまうでしょう。
人間は感情の生き物です。
こどもの暮らしぶりをみるとそのことがよくわかります。
よく笑い、よく泣き、よく悩み、よく怒りと感情の起伏がとても激しいものです。
このように感情表現が豊かであることは、健康であることのひとつのバロメーターといえます。
私たちの感情が侮辱に対して怒り、楽しいときに喜ぶことは健康なときの反応といえます。
しかし、急激に、強い感情的なショックをうけたり、長期間にわたり精神的なストレスをうけつづけるとからだに悪い影響を及ぼすことがわかりました。
その結果、無表情や無反応になったり、動悸、不眠、下痢などの内臓のやまいをおこすこともよく見受けられます。
三つめは食事、および過労と運動不足を原因とするものです。
食事はからだをつくる礎です。
決しておろそかにしてはならないものです。
なかでも最も慎むべきは、食べ過ぎです。
食事時間が不規則であったり、急なダイエットをすることなどもよくありません。
常日ごろからだを冷やすもの、温め過ぎるものを食べたり、油もの・甘いもの摂りすぎは胃腸をこわす原因となります。
さらに働きすぎや運動不足は代謝をおとし、背中が脹る、筋肉が細くなる、疲れやすくなるなどの症状をひきおこします。