第26号 ~ 養生(2007年12月)
一年間シリーズでお伝えしてきました東洋医学の基礎講座も今回でひと段落つきます。
最終回は養生(ようじょう)についてお話していきます。
前回までのお話は治療学についてのものでした。
いわば病気になってからの対処法です。
今回は養生、つまりどのようにしたら病気にならないかについてお話していきます。
じつは養生法には大きくふたつの意味が含まれています。
ひとつは病気にならない方法。
もうひとつは病気がそれ以上ひどくならない方法です。
ここでいう養生とは、東洋医学における予防医学の分野だと理解して下さい。
「やまいを未然に防ぐ」という考え方は、東洋医学において一貫して重視されてきた独特なものです。
江戸時代には貝原益軒の「養生訓」が出版されるなど世間にも養生の考え方は浸透していました。
ところが、そんな養生の基本となる東洋医学の考え方が一気にすたれてしまう事件がおこりました。
それが明治維新後の西南戦争です。
鉄砲による傷口に対して東洋医学は実に無力でした。
そしてその後流行したコレラに対してもほとんどなす術をもちませんでした。
コレラに対しては、西洋医学による石炭酸の威力に世間は圧倒されてしまいます。細菌の存在を知らない東洋医学はまったく野蛮な医学になり下がりました。
このような末に、欧米の医学が主流をしめるようになると東洋医学は衰退して、しだいに養生の考え方も忘れさられていきました。
しかしそれから一世紀あまりを経て、東洋医学はまた徐々にその存在感を示すようになります。
現代の科学的に開発された新薬にも限界がきているからです。
たとえば抗生物質を例に考えてみましょう。
開発をくりかえす新薬に対して、あざ笑うかのようにそれに耐性をもつ細菌が次から次へ発生していきます。
このような現象の裏にはすぐに医療機関に依存してしまう、何かあるとすぐに薬や注射に頼るという世相が強く影響しています。
そこで養生の考え方がふたたび生きてくるのです。
つまり自分のからだは自分で守る、免疫の力を上げる、という発想です。
最新の科学に頼り、細菌の進化に立ち向かうよりも、自身を病気になりづらいからだ、病気の悪化しにくいからだにしておくことの方がやさしいことなのです。
本当にからだを大切に思うのであれば、優れた薬、最新の医療設備に身をまかせるのは最後の手段にとっておくべきなのです。
最後に東洋医学的な養生法を三つお伝えします。
いつも思うことなのですが、このような話はなかなか実行できるものではありません。
すぐに挫折することもあります。
でも何かを成し遂げるということはそういう過程を何度も乗りこえることなのだと思います。
まず手始めに以下を意識して生活してみて下さい。
1. 精神:足るを知る
2. 体力:太ももを鍛える
3. 食事:腹八分