第34号 ~ ぜんそく(2008年8月)
医学の進歩とともに、ぜんそくへの理解がすすんだ今日でも、まだたくさんの方がぜんそくの発作に悩まされています。
そのため近年、最高のくすりとして吸入ステロイド薬が登場しました。
このくすりは炎症をおこす細胞を減らしたり、気管支を拡張するなど、とにかくすこぶる効果を発揮するのです。
しかし問題はその副作用。
ステロイドは免疫力を低下させる、骨粗しょう症や糖尿病を誘発するなどのおそれがあるといわれています。
またからだには痰を吐き出す、という大切な防衛反応がありますが、これを抑制してしまいます。
したがって咳は止まったが、胸に痰がつまり根本的にぜんそくが改善しないなど、その使用法に注意が必要となります。
ただし長期にわたり、だらだら使用することさえしなければ、最強の抗炎症薬としてぜんそくの治療に大いに役立つことは事実といえます。
さて現代医学にして難病であるぜんそくは、漢方にとってもかなり手ごわい相手です。
漢方ではぜんそくの根本を、「痰飲(たんいん)」と呼んでいます。
これは水分の代謝がうまくいかずに、からだの不要な水分が濃縮されたもののことです。
しょっちゅうぜんそくをおこす人の呼吸する音から聞こえる、ヒュ-ヒュ-、ゼロゼロを鳴らしている発生源のことです。
この痰のようなものが、肺や気管支に停滞することで正常な呼吸ができなくなり、呼吸困難をおこすと考えます。
ではこの痰のようなもの、なぜからだに発生してしまうのか。
漢方では大きくふたつの理由にわけて考えます。
ひとつはからだの外から入ってきたものにより、痰がつくられるという考え方。
もうひとつは内臓のはたらきの低下で不要な水分が溜まり、濃縮されてつくられるという考え方です。
いずれの理由にせよ、ぜんそくは、痰が肺にまとわりつきそのはたらきを低下させた結果であるといえます。
漢方による鍼灸治療では、なぜ肺に痰がつくられてしまうのか、その原因を明らかにして治療をおこないます。
当然いろいろな原因で、痰がつくられぜんそくがおこります。
鍼灸治療もその原因ごとにツボを変えておこなわれます。
今回はいろいろなケースでよく使われており、知っているとたいへん便利なツボがあるのでご紹介します。
その名は「尺沢(しゃくたく)」。
ひじをかるく曲げたときにできる、ひじの内側のしわのまんなかで、親指側のくぼみにあります。
このツボは咳止めの特効穴としてとても有名です。
お灸をすえる、あるいは指圧でかるくひびく程度の強さで押してみましょう。
漢方では、肺に痰ができるそのわけを探り、痰がつくられるのを防ぎ、気道を通じやすくして抵抗力を高めるなどその治療はつねに根本的な解決をめざしています。
漢方による鍼灸治療が、体質改善を得意とするわけがここにあります。