第36号 ~ 冷え性(2008年10月)
とても暑かった夏が終わり、すごしやすい季節になりました。
これからは、ゆっくりと冬に向かっていきます。
今回は、そんな寒い季節が近づくと、お悩みの方が増えてゆく「冷え」についてお話します。
漢方では、「冷え」についてどのようなアプローチをしてゆくのでしょうか。
治療をしていて思うのですが、いわゆる筋肉質に、本物の「冷え症」の方はほとんどいらっしゃいません。
筋肉質の方が冷えを感じるのは、精神的ストレスが強い場合や、実際に寒い環境に長い時間居たためにおこる一時的なものがほとんどです。
したがって、筋肉が比較的しっかりついている方の冷えについては、また別の機会にお話します。
では本物の冷えについて、まずひとつは脂肪に注目して考えてみましょう。
漢方では、脂肪を痰飲(たんいん)と呼び、余分な水分と考えます。
漢方的には、脂肪をたくさん蓄えている方々は余分な水分をかかえこんで生活している、というわけです。
この脂肪という名の余分な水分。冷たい環境にさらされると、容易に「冷え」に変化します。
水というのは、外の環境に強い影響を受ける物質といえます。
水道の蛇口をひねると、夏場は生ぬるいのに冬になるととても冷たく感じられるのはそのためです。
クーラーの効いた部屋に長時間いたり、冬場などはからだに蓄えられた水は、すぐに冷却してしまいます。その結果が冷えなのです。
もうひとつは、内臓のはたらきの衰えからくる冷えです。お年寄りや、もともと虚弱な方に多くみられ、やせて見えるが筋肉が少ないタイプです。
胃腸や腎機能の衰えから、からだを内側から温めることができないために、冷えがおこると考えます。
余分な水分をかかえこんでおこる冷えと、からだを温めることができないことによる冷えでは治療法が異なります。
余分な水分をかかえこんでおこる冷えに対しては、いわゆる「水はけの良いからだ」を目指して水分代謝を調える治療をおこないます。
からだを温めることができないことによる冷えに対しては、内臓のはたらきを鼓舞するような治療をおこないます。
このように漢方では、一口に「冷え」といっても、その原因ごとに異なった治療法でアプローチします。
このふたつの原因の異なる冷えに、共通して効果のあるツボをご紹介します。
その名を「関元(かんげん)」といいます。
おへその下、7~8センチのところにあります。
今回記しました冷えに心当たりのある方は、そこに簡単なお灸をすえてもいいでしょう。
また、関元に手のひらを載せて、その部分が温まることをイメージしながらゆっくりと腹式呼吸をおこなうととても効果があります。