第41号 ~ お腹を下させる(2009年3月)
食べたものがお腹の中を通過して、便として排出される。
このあたりまえとして考えられていることが何の支障もなくスムーズに行われている人はとても恵まれています。
便が出なくて苦しい、若いころから便秘症だ、というお悩みをおもちのかたがたくさんいらっしゃるからです。
つまり、便が適度なリズムできちんと排出できる、ということはそう当たり前のことではないのです。
漢方では、「気の流れ」というものをとても重視します。
一般には"新陳代謝"だとか"血液循環"という言葉におきかえるとイメージしやすくなります。
健康なひとはこの「気の流れ」というものがスムーズで滞りがありません。
この「気の流れ」の考え方、じつはふだんわたくしたちが三度口にする食べ物にもあてはまります。
ご存じのとおり、ひとのからだをつくる血や肉や骨などは食べ物から大きな栄養をうけています。
漢方ではいったんからだの中に入った食べ物のことを「食気(しょくき)」と呼び、からだをかたちづくる気の一つとみなします。
「食気」は消化吸収されていくなかで、からだに必要な栄養素をわたくしたちに与え、生命を維持してくれます。
そんな食べ物のすべてが、あますところなくきれいに消化されてしまえばどんなにか快適なことでしょう!
この世から便秘に苦しむ人がいなくなります。
ところが現実はそれを許しません。どんな豪華なごちそうも、糞という形でしっかりと残りかすを生じます。
そしてその残りかすがいつまでたってもからだの外に出ていかないと今度はからだの状態を悪い方へとみちびきます。
何も便秘に苦しむばかりではありません。
食欲がなくなる、食事のあとに吐き気がする、顔色がすぐれない、吹き出物がでやすい、頭痛、腰痛、生理痛などさまざまな副産物が症状として現われてきます。
まさにお腹の中に便が停滞すること、「気の流れ」が滞ることは諸悪の根源足りうるのです。
そのようなとき、漢方では「瀉下(しゃげ)」という目的の治療を行います。
これ、簡単にいうとお腹から便を排出させることです。
漢方ではこの方法にもとづき、いつまでたっても停滞する胃腸の滞りを便として排出させて、「気の流れ」を正常にしてからだを健康な方に向かわせます。
ただし、"瀉下"本来の意味合いとしては、胃腸の滞りをぬぐい去るものであって、何も便そのものを目標にしているわけではありません。
ツボでいうと天枢(てんすう)、大腸兪(だいちょうゆ)が使い勝手の良い、効果的なものです。
天枢はおへその横の腹筋に、大腸兪は背骨の両脇の筋肉が腰骨にぶつかるところ付近にあります。
便秘にお悩みの方は、深い呼吸をしながら、吐く息にあわせてゆっくり指圧してみましょう。