第42号 ~ 和(なご)ませる(2009年4月)
今月お話するのは、和法(わほう)という治療法についてです。
これはとてもユニークな治療法です。
今までのように病気の原因を追い出すという発想とはちがいます。
和法というのは、追い出しません。和ませるのです。
なごませるというのは間接的な治療法といえます。
具体的にどうするのかというと肝臓や胆のう、胃腸のはたらきをととのえることをいいます。
つまり内臓のはたらきをととのえ、抵抗力や免疫力を高めることで病気の原因をからだのなかで処分してしまいます。
外科手術などで、手術用具を置き忘れたことが何年もたった後にわかることがあります。このようなとき、からだはオブラートにつつむかのようにみずからの組織で手術用具を無毒化していきます。
外から入ってきたものをとくに追い出すというわけでもなく自己矛盾に慣れていくという点では、この場面にみられる生体の持つ防御システムも和法のひとつと考えられます。
病気は不思議なものです。
からだの表面に取りつくかと思えば、深みにまでもぐっていくこともあります。
なかには表面でもない、深みでもないそんなところにひそむこともあります。
このような中途半端なところにいすわられたら、追い出そうにもなかなか追い出せません。
追えばかくれ、追うのをあきらめるとまたでてきて悪さをする。
かくれんぼのような状態になるからです。
このようなときは、素直に追うことをあきらめます。
そして抵抗力や免疫力を高めていきます。
これが和法の発想です。
実際にこの治療法、かぜをひいてこじらせてしまったり、病気が長引いていく過程で用いられます。
適用する症状は、寒けと熱を交互に繰り返す、めまい、吐き気がする、のどが渇く、口がにがい、小便がすっきりでない、わき腹が張って苦しい、いつまでもつづく倦怠感などです。
漢方薬では小柴胡湯が基本となる方剤です。
ツボは陽陵線(ようりょうせん)を用います。
陽陵線は膝の下、外側の腓骨小頭の直下にあります。
外くるぶしから足の外のラインを膝に向かって上りぶつかるところ付近に位置します。
とくに肝臓や胆のうの熱を冷ますはたらきでからだの抵抗力や免疫力を高めます。