第43号 ~ 温める(2009年5月)
ラーメン、うどん、そば。
こういったものをアッツアツのうちに食べると、とてもからだが温まります。
そしてこれはみなさんもご経験でしょう。
しぜんに汗や鼻水が出てきます。
これ、簡単に言ってしまうとからだに入ってきた温かいものが、からだの中の冷えを追い払っているのです。
この場合に流れ出る汗や鼻水というのはからだにストックされていた冷たい水なのです。
それが温かいものの侵入により外に追い出されているのです。
温かいものがからだに入ると同時に、冷たい水が出ていくわけですから当然からだも温まります。
寒い冬などには知らず知らずのうちにからだは温かいものを求めています。
このようにからだを温めて冷えにともなう水分を追い払うというのが、漢方の基本的な治療法のひとつ「温める」ものなのです。
そのように考えると冬の寒い日にサラリーマンが帰りに熱燗一杯なんていうのも・・治療のうちなのでしょう。
さて漢方的に温める治療を考えるとき、そのポイントは大きくふたつにわかれます。
ひとつは集中してからだの皮膚、つまりからだの表面を温める治療です。
もうひとつは集中して内臓を温める治療です。
ふつう冷え性の方ですと、からだの外側と内側が両方とも冷えています。
ところが中には、からだの表面が冷えているにもかかわらず、じつは内臓が熱をもっていることがあります。
こういったケースに、やみくもにからだを温めてしまうと病状が悪化します。
したがって、漢方ではそういった状況に対応するために温めるポイントをからだの表面と内臓にわけて考えています。
この観点がないと、治療が一面的なものになり、さまざまな状況に対応できなくなります。
たとえば、状況によってはからだの外側だけを温めなければならないケースもあるわけです。
さて針灸治療においては、からだを温めるときによくお灸を用います。
からだの表面を温める場合と内臓を温める場合のちがいは灸の種類を変えることで対応しています。
からだの表面を温めるときにはシールではりつけることのできる簡易灸を用います。
これは市販されており、どなたでも簡単に手に入ります。
その一方で内臓から温めたいようなときには、灸頭鍼(きゅうとうしん)という灸を用います。
これは鍼灸院でなければなかなか行うことができません。
ツボにまず針を入れ、その針の頭にもぐさを載せて点火します。
するとお灸の温かさが針を通じて内臓に伝わり、からだの内側から温めてくれます。
この灸頭鍼は、もちろん内臓を温めるための灸でもあるのですが、深いところで関節が冷えて痛む方にとても効果があります。