第5号 ~ 偏食のススメ(2006年3月)
ついつい忘れがちになるのですが、毎日の食事によってわたしたちがその姿かたちを保っている、というのは厳然たる事実です。
ですから、普段の食事に少し気をくばるだけで、針灸や指圧による治療がさらに効果的になるのは自然な話です。
僕は山梨県の富士吉田市出身です。夏はその涼しさから避暑地として観光客が訪れ、冬はかなり厳しく冷え込むところです。
子どものころの食事といえば、冬になると毎日毎日うんざりするほど「ほうとう」が食卓にのぼっていました。
富士吉田の土壤が稲作にそれほど適してなく、小麦がよく栽培されていたため「ほうとう」やうどんなどのめん類がよく生産、製造されていたからです。
管理栄養士の幕内秀夫さんは「FOODは風土がきめる」とその著書に記しています。
ひとは、与えられた自然環境や風土の中で、ただその土地でとれたものを食べてきたに過ぎないのだ、それぞれの民族が自らの住む風土にてきした食べ物を偏食しているように、日本人も「日本の風土に適したもの」を偏食すべきではないだろうか、と述べています。
日本人の主食は米である、そのことに疑問をもつ方はまずいないでしょう。
ところが、食生活が欧米化してしまった昨今、米の消費量は減少する一方です。
かつて、海に囲まれ野山に親しんだ日本には、その風土のなかで生まれた独自の食生活がありました。
米や雑穀 (ひえ・あわ・きび)、いも類を主食とし、季節の野菜や豆腐、海藻、魚介類を食べるというものです。
お分かりでしょうか。
祖先は日本食を長きにわたって「偏食」して、その遺伝子をわたしたちに授けて下さいました。
不思議なもので、僕も子どものころには苦手だった「ほうとう」や、めん類が今では家族があきれるくらいの好物となっています。やはり、土地のものが体に合うのです。
現在、日本人のからだは多食されている肉や牛乳、バター、パンなどにより急激な化学変化をおこしています。
多国籍な料理を無秩序に口にしているからです。
流通の革命的な発達により、手に入るようになった世界中の食べ物を「バランスよく」食べているからです。
そのつけが、小学生にまでおよぶ生活習慣病の弱年齢化です。
その悪い流れを変えるためにも、わたしたちは、お米・みそ汁・漬け物を中心とした日本食をおおいに偏食しましょう。